蝉も僕もそんな変わらなかった話

最近は過ごしやすい気温だったね。
特に昨日。
台風だったけど。

東京都心は久しぶりの雨で
最高気温も27度でした。

久しぶりにこんな
良心的な数字を見たよ。

ただなんて言うのかな。
今朝から蝉めっちゃ鳴いてない?

蝉、普通は羽根が濡れちゃうと
飛べなくなるから雨の日は
鳴かないんだけどね。

最近の異常気温で活動出来なくて
出逢いが無かったのかな。

オスさんサイドの
『求愛するなら今日しかねぇ!』
『なりふり構ってられねぇんだよ!』
って意気込みが凄く伝わる。

開き直って夜鳴く蝉より
なりふり構ってねぇ。

でもパートナーは全然飛んで来ないの。

だって雨の日に蝉は飛べないから。

んでなかなかパートナーが来ないから尚更
大きな声で必死に鳴くの。


女性の皆さん、
これ読むとオスって
バカだと思うでしょ。

でもオスってそんなモン。

蝉も、人も、そして僕も。

夏の男って大体そんなモン。


蝉も僕もそんな変わらなかった話



あれは20年近く昔かな。

学生の頃、ちょうど今年みたいに
溶けるような暑い夏のある日。

当時恋人と別れた僕は
何事に対しても無気力になり、
それこそ半分溶けたゾンビの様に
生きていました。

それを見かねた地元の先輩が
『万里!明日は海にナンパ行くぞ!!』
って誘ってくれてさ。

ワクワクしながら準備したんだけど
翌朝は案の定大雨で。

しかし僕らは
『もう後には退けねぇんだよ!!』
と言って海に向かいました。

今書くとなんかワンピースっぽいね。

尾田先生がワンピース
【三浦海岸編】を描く時は

僕の所に取材に来るんじゃないかな。


まぁそれで。

案の定海水浴場に女性達の姿は無くて、
つーか誰の姿も無くてさ。

なんかプライベートビーチみたいに
なってました。

それでも夢と出逢いを諦めきれない僕らは
【ビーチで踊ってれば見かけた女性が
近付いて来るかもしれない大作戦】
というアイデアを思いつき、
誰も居ない浜辺で2人きり
ドシャ降りの中を永遠と踊っていました。

『音楽なんていらない。
打ち寄せる波の音、そして
砂浜を叩く雨音があれば
僕らのセッションは始まるのさ』
なんてカッコ良さそうで
ギリギリカッコ悪いセリフを
吐きながら踊っていたけど、
本当に誰も来ないの。

まあ雨の中で上半身裸の男2人が
ビーチで踊り狂っていたら
普通は近づかないよね。

でもまだ若かった当時の僕らは
そんな当然の思考に至ることもなく
無心で踊り続け、最後の方は
【この際男性でもいいからとにかく誰かと
出逢いたい大作戦】
と、ちょっと作戦名と方針
が変わっていました。

諦めかけたその時、遠くに人影が!

僕と先輩は
『無人島に遭難した人が
沖に救助船見つけたの?』
ってくらいテンション上がっちゃって。

2
人とも
『なりふり構ってらんねぇんだよ!』
『この機会を逃したら死んじまうんだ!』
って意気込みで持ち得るアクロバットを
全てやりました。

思い返せば、あの時はどんなバトルや
コンテストの決勝よりも必死だったなぁ。

結果、先輩はバク宙の着地に失敗して
左足を捻挫。

僕は途中で逆立ちした時に砂が目に入って
『目がぁっ!目があぁっ!!』
ってムスカみたいになってました。

なんとか目が開くようになり
周りを見渡したら遠くに見えた
人影は既に消えてて。

横見たら先輩が
『万里ヤバい超痛いんだけどマジヤバい』
とか言いながら片足で
ピョンピョン跳ねてんの。

ドシャ降りの中呆然と立ち尽くす僕。
遠くに聞こえる波の音。
なんか横で跳ねてる先輩。
もう見えない人影

結局、地元に帰ってきて
駅前にある白木屋で
2
人だけの大反省会。

先輩は捻挫を名誉の負傷みたいに
言っていました。

いやあんた何も得ていないだろ。
ただの自損事故だからねって言いかけたけど
その言葉をグレープチューハイと一緒に
飲み込んだのを今でも覚えています。

そしてその年の夏は何事もなく、やっぱり
溶けたゾンビのように過ごして終了しましたよ。


そんなこんなでね。

雨の中、ダメ元で鳴く蝉を見ると
あの頃の自分を思い出すのです。

思い出すっていうか
そんな変わらないよね、
蝉とやってる事。

皆んな、特に女性の方は
もし雨の中で必死に鳴く蝉を見たら

心の中で応援してあげてください。

あの声、この夏にかけた男達の
魂の叫びなので。

その蝉、もしかしたら
あの頃の僕達かもしれないので。

夏の男って大体そんなモンなので。